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さらさら

さらっと、さらさらと。サラリーマンがサッカーとかゴルフとかを語ります。

「ほぼ負けることのない戦いが、そこにはある」問題

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カーボヴェルデ」をご存じでしょうか?

 

 

恐らく日本人の認知率はかなり低いんじゃないかと思います。

 

これ、国名なんです。

 アフリカ大陸の西の沖合、つまり大西洋側の諸島から成る島国で、面積は滋賀県と同程度、人口は約52万人で板橋区よりちょっと少ない程度という、まあお世辞にも大きいとは言えない国です。バナナやサトウキビを中心とした農業とマグロ漁などが主な産業で、スポーツではサッカーが最も盛んですが、もちろんワールドカップに出場したことはありません。

そして、最新のFIFAランキング(2016年5月)で日本より10ランク上に位置する国です。

 

えっ!? って話ですが、そうなんです。

 

残念ながら57位に甘んじる日本を差し置いて、47位に君臨していらっしゃいます。アジア勢でカーボヴェルデより上位にいるのは、42位のイラン代表一国のみです。

 

数年前に日本のランクを追い抜いて以来、残念ながらほぼ安定的に日本を上から見下ろす立場にいます。

 

日本がそんな順位だということを嘆く稿、というわけではありません。

 

FIFAランキング」のカラクリと意味

  このアフリカの小国が、仮にもアジアの盟主(と私は自認している)である日本代表より高いランクにある理由として、FIFAランキングのシステム上のカラクリがあります。

 

 現在のFIFAランキングの算出は複雑なポイント計算式に基づいており、単純な勝ち数の積み重ねだけでは、なかなか順位を上げることができません。対戦相手の強さや、その試合の重要度(例えばW杯やアジア杯などのプライオリティが高い大会か、そうではないただの親善試合か)、試合実施日の古さ(より最新の戦績を重視)などによって、一定の係数がかけられます。

 ざっくり言うと、日本を追い抜いた時期のカーボヴェルデは、重要度の高い(係数が高い)アフリカ杯やW杯予選で、格上相手(同じく係数が高い)に好成績を出し続けたために、短期間でポイントを荒稼ぎできたというわけです。

 

 なんだ、そうだったのか。・・・と、胸を撫で下ろすには早いのです。

 

 よく「FIFAランキングなどあてにならない」と言われますが、あてにならないからといって軽視できる代物でもないのです。

 なぜなら、日本が最大の目標とするワールドカップにおいて、グループリーグのシード国はFIFAランキングを元に決められるからです。つまり、FIFAランキングが低いほど、強豪ばかりのグループに弱小国枠で放り込まれることになるわけです。これはマズイですよね。

 

「ほぼ負けることのない戦いが、そこにはある」問題

  それではとばかりに、日本もどんどん格上との戦いを組んでランキングを上げいきたいところです。しかし、残念ながらそうもいかない事情があります。

 端的に言いますと、日本代表は「格上と重要度の高い試合で戦う機会」が非常につくりづらい環境にあります。

 

 まず地域的な問題。アジアサッカー連盟(以下AFC)に所属する日本は、当然アジアが主戦場となります。長丁場を戦い抜くW杯予選、そしてアジア王者決定戦であるアジア杯などがその舞台です。必然的に日本より上位の国が少ないアジア勢ばかりと対戦するわけで、格上と対戦することになりづらい構造です。

すなわち世界の強豪国(格上)と真剣勝負(重要度の高い試合)をするためには、アジア杯優勝で出場機会を得られるコンフェデレーションズ杯に出るか、W杯に出るくらいしかありません。また、いくら強豪と戦う場を得ても、そこで負けてしまっては当然ポイントはもらえません。

  

 また厄介なことに、FIFAランキングのもう一側面として、所属地域間の係数というものが存在します。つまり南米や欧州などの“列強”と比較して、アジアや北中米などの強豪圏と言えない地域では、獲得ポイントに対してマイナスの係数がかかります。例えば対戦相手が同じFAIFAランキング50位の国だとしても、「50位のアジア」に勝つよりも、「50位の南米」に勝つ方がポイントが得られるわけです。つまり、南米や欧州の国々は、AFC諸国相手の勝利がポイント的には「美味しくない」ということです。ポイントが得づらく試合経験としても微妙、その上遠方のアジア勢と試合をすることに、単純にメリットが少ないわけです。これまたマズイですね。

 

 つまり日本は、元々とてもランキングが上げづらい環境に身を置いているわけです。

 

 そして、この問題の最大のデメリットは、実戦強化の面でしょう。ザッケローニ監督が就任した2010年10月以降で見ると、日本がアジアの国々と戦った戦績(親善試合を含む)は、48戦33勝10分5敗。勝率68.7%、敗戦率は10.4%となり、実質10回に1回、1年に1回程度しか負けません。

 「絶対に負けられない戦いが、そこにはある」という国民的キャッチフレーズもありますが、実質は「ほぼ負けることのない戦いが、そこにはある」状態です。このアジアでの戦いが代表戦の大半を占めるわけですから、世界の強豪圏と比べて実戦強化の面でのハンディがいかに大きいかは推して知るべしでしょう。

 

どう考えるべきなのか?

 日本代表の現在の世界ランキングは57位。客観的に見ると、57位の国がW杯で優勝したら奇跡でしょう。 じゃあ奇跡でも起こらない限り優勝はできないのかと肩を落としそうですが、今シーズンの欧州では奇跡を起こしたチームがあります。

そう、先日プレミアリーグを制したミラクルレスターこと、レスター・シティです。

また個人的には、ここ3シーズンで2度のCL決勝進出を果たしているアトレティコ・マドリードも、奇跡と言わないまでも驚異の大躍進をしたチームだと思います。

レスターとアトレティコ、彼らに共通するのが、チーム哲学とも言える域にまで徹底されている堅守速攻、カウンター戦術です。

じゃあ日本代表もカウンター主体のチームになりましょうと言うわけではありませんが、優勝するはずのないチームがジャイアントキリングをやってのけた事例からは、素直に勉強したいものです。

 

 重要なのは、カウンターアタックが優れた戦術だから彼らが躍進したわけではなく、置かれた環境に見合ったベストな戦略(strategy)に基づいて選んだ戦術(tactics)としてカウンターを突き詰めたのが正解だったということです。

 カウンターありきではなく、結果としてカウンターを採用したということ。似ているようで大きく異なります。もしも彼らが、監督の理想に合わせて各ポジションに自在に最高レベルの選手を集められるビッグクラブだったとしたら、今のようなスタイルのサッカーはしていないでしょう。

 置かれた環境に見合ったベストな戦略で結果を出したチーム、それがレスターとアトレティコです。日本代表が参考にすべきは、こういう事例なのではないでしょうか。世界57位の日本が華麗なパスサッカーで、ましてやバルセロナのようなポゼッションサッカーで世界の強豪を打ち破っていく姿は、正直想像し難いです。いくら欧州のリーグで活躍しているとはいえ、誰一人バルセロナでプレーしていない選手たちを集めて、バルセロナのようなサッカーをしようというのは、そもそも無理でしょう(ハリルさんはそんなこと言ってませんが)。

 

 私が求めるのは、ポゼッションとカウンターのバランスを意図できるインサイドワーク、臨機応変さです。

 思うんですよ。実は日本はカウンターもハイレベルに進化させることができるお国柄だって。

 

日本には、できると思う

 日本代表のゴールシーンは、我が国ながら尊敬してしまうほどに、密集地帯をこじ開けて決めているものが多いです。相手が自陣に引きこもる状況が常態化しているため、必然的にそこをこじ開けるシーンが多くなるわけですが。それこそバルセロナ並みに密集地帯をこじ開けてます。 

 とは言え、W杯本番では相手のキープ力やカウンターの切れ味がUPするため、アジア予選と同じ戦い方はできません。相手がドイツやスペインでも、ポゼッションサッカーで臨めるでしょうか?

過度なパスサッカー信仰が、カウンターという持っていてしかるべき武器を鍛え上げる妨げにならなければと危惧しています。

 

 ポゼッションもカウンターも流れの中での一状態・一現象であり、どんなチームにも共に必ず双方を行う機会が訪れます。要は試合の中での多い少ないであり、もっと言えば、その一状態・一現象を意図しているかいないかです。

 ハードワークを厭わず、組織力がDNAに強く組み込まれた日本人は、元々堅守を築ける素地を持っていると思います。個人的には、今のミッドフィルダーサイドバックのクオリティ、排出人数が維持されていくのであれば、あとは優れたセンターバックを二人確保できれば、どんな相手にも通用する堅守速攻が可能になると考えています。フォワードはいわゆる0トップ戦術でもいいと思います。だからセンターバックの選手には、どんどん海外挑戦してほしいですし、実際10~15年くらいで、センターバックにはゲームメイク能力も求められるようになり、全ポジション海外経験は不可欠になると予想しています。

 

 日本には、できると思います。実際これまでも日本代表は、強豪国相手に素晴らしいカウンターアタックを数々決めています。日本ほどの献身性を持ったハードワーカー集団が虎視眈々とカウンターを狙ってきたら、私だったら恐さを感じますよ。

  

 日本では「弱者の戦術」としてネガティブに捉えられがちなカウンターですが、私には未開発の必殺技、希望の光にしか見えません。過度なパスサッカー信仰とアジアという特殊な環境が、「思考停止=日本サッカーの足踏み」にならないことを祈るばかりです。

 レスターのプレミア優勝に続いてアトレティコがCL優勝となれば、わかりやすい一石が投じられるのではないかと期待しいます。

  

【了】

 

beamrivercity.hatenablog.com