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「祝」優勝まとめ ①/レスター優勝、本当の「レア度」

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決めてくれました。

 

レスター・シティイングランド・プレミアリーグ初制覇。(アザールさん、ありがとうございます)

 

「奇跡」、「奇跡」、「奇跡」。。。

 

マスコミには「奇跡」の二文字が乱舞しました。

 

「奇跡」の度合いを示す目安として、イギリスのブックメーカーのオッズも盛んに取り上げられました。レスターの優勝オッズは5000倍で、これは「ネッシー実在」や「エルヴィス・プレスリーが生きていた」と同レベルだとか。つまりレスターの優勝は、「あり得ないこと」、「悪い冗談」に類する話だったというわけです。

 

それだけ「無理」と思われていたチームが、世界最高峰の、それも38試合を戦い抜く長丁場のリーグ戦で優勝したという「世紀の番狂わせ」。大騒ぎになるのも当然でしょう。

 

 この稿では今回の優勝に敬意をこめ、もう少し詳細を語りつつ、レスター・シティ優勝の凄さと、それによってもたらされるものについて書いていきたいと思います。

 まずはビッグビジネスとなった現代サッカー界において、具体例を交えつつ、レスター優勝の「レア度」を検証したいと思います。 

 

そもそも何が凄いのか?

 

 以前の稿でも書きましたが、現代の欧州サッカー界は“超”格差社会です。 

 

beamrivercity.hatenablog.com

  持てるビッグクラブと持たざる中小クラブには天と地ほどの資金力格差があり、無論その格差は所属選手のレベルにも反映されています。

オイルマネーに代表される巨大な資金力を背景に、100億円以上の移籍金(選手が移籍するクラブ間で支払われるお金)と数十億円の年俸を払って、世界中からスーパースターをかき集めるビッグクラブたち。スター軍団を組織して、毎年当たり前のように優勝争いを演じ、自国リーグ戦、自国カップ戦、ヨーロッパでの戦いを同時進行で華々しく勝ち進んでいきます。サッカーファンでなくともスポーツニュースで頻繁に目にする名前、バルセロナレアル・マドリードマンチェスター・ユナイテッドなどがそれにあたります。

 一方その他の中小クラブは、自前で育成した選手と市場価値の“割安”な選手で構成せざるを得ないため、当然スター揃いのビッグクラブより上位に食い込むことは難しく、下部リーグへの降格を免れたことに胸を撫で下ろすような暮らしを続けざるを得ません。

  とりわけ4大リーグと言われるスペイン、ドイツ、イングランド、イタリアは、強烈なビッグクラブが複数存在しているため、この傾向が顕著です。

 今回レスター・シティが優勝したイングランドプレミアリーグは、サッカーの母国のリーグであり、市場規模と人気もサッカーでは世界一。まさしく世界のサッカーの中心地、一丁目一番地です。レスター・シティ優勝は、そこで起こった事件です。具体的に見ていきましょう。

 

プレミアリーグで優勝することの難しさ

 

 イングランド・プレミアリーグの創設は1992年。

 サッカーの母国なのに、リーグの創設が24年前というのはおかしな話に見えますが、もちろん100年以上前からリーグはありました。

 

 なぜ24年前を機に新たなリーグとして創立されたのか? その理由こそが、前身の「フットボールリーグ」が現在の「プレミアリーグ」に変わった経緯であり、現在のサッカー(スポーツ)界の爆発的な商業化につながる「テレビ放映権料」をめぐるいざこざでした。ざっくり言うと、それまでのイングランドでは、テレビ局からもたらされる放映権料が不当に安かったため、人気チームから不満の声が上がり、相応の対価を得るべくフットボールリーグから独立。彼らが“恩恵を受けられる”制度で新設したのがプレミアリーグというわけです。

 

 そもそもの生い立ちが「相応の経済的対価を受ける」という考えに基づいているリーグですから、爆発的に高騰していくテレビ放映権を礎に、急速に市場規模を拡大していきました。

 元々豊富な資金力を持っていたビッグクラブは、市場拡大の恩恵を活かして急激に売上を伸ばしていきます。現在のスポーツ界の商業化は、1984年のロス五輪が端緒と言われていますが、1992年のプレミアリーグ発足、1995年のボスマン判決と、今に至る道筋が骨格を成した時期だったということでしょう。当時はイタリアやスペインの後塵を拝していたイングランドサッカーですが、瞬く間に世界中のスター選手が集まる世界最高峰リーグへと躍進します。

 このように、ある意味経済原理に対して忠実にスタートしたと言えるのがプレミアリーグです。発足後は売上だけでなく、その勢力図も経済原理に連動して推移してきました。 

 それを示すように、過去23シーズでの優勝クラブはわずかに「5」クラブ。マンチェスター・ユナイテッド(13回)、チェルシー(4回)、アーセナル(3回)、マンチェスター・シティ(2回)、ブラックバーン・ローバーズ(1回)という内訳です。

 

 ブラックバーン以外はいずれも豊富な資金力を誇るビッグクラブであり、かつブラックバーンが優勝した当時の1994-1995シーズンは、今ほど異常なサッカーマネーの高騰が起こる前夜でしたから、今に比べれば「隙」があった時代です。とは言え、当時のブラックバーンのオーナーであるジャック・ウォーカーは、アラン・シアラークリス・サットンという、当時のイングランドで最高レベルにあったストライカーを立て続けに獲得。それぞれが当時のイングランドの移籍金最高額を更新する獲得劇だったため、その時なりに「持てる者」がスターを集めて勝ったという図式でした。ちなみシアラーの移籍金は330万ポンド(5億円強)、サットンは500万ポンド(8億円弱)ですから、今にして見れば本当に「カワイイお買いもの」です。(※岡崎慎司マインツ→レスター=700万ポンド)

 

 このように、とにかくお金がないと(スター選手を揃えないと)勝てないリーグ。それがプレミアリーグです。また、この傾向はイングランドに限ったことではありません。サッカー界全体が、爆発的商業化に伴って、持たざる者の勝てない世界になっていることを 再確認いただきたいので、プレミアも含めて4大リーグと呼ばれるスペイン、ドイツ、イタリアについても見てみましょう。

 

世界的に番狂わせはできなくなった

  

 まずはスペインのリーガ・エスパニョーラプレミアリーグ発足と同じ1992年以降の優勝クラブを見てみましょう。その内訳は、バルセロナ(11回)、レアル・マドリード(7回)、アトレティコ・マドリード(2回)、バレンシア(2回)、デポルティボ・ラ・コルーニャ(1回)。

プレミアリーグと同じく、わずか5つのクラブしか優勝していないことがわかります。しかも、23シーズンのうち18シーズンをバルサとレアルの2クラブが独占していて、「2強」の図式が顕著です。

 この期間に2回優勝しているアトレティコも、リーグ通算優勝回数は10回、バルサとレアルに次ぐ人気を誇る名門です。同じくバレンシアも通算6回の優勝経験があり、名門クラブと言っていいでしょう。

 この期間で唯一初優勝だったのは、1999-2000シーズンのデポルティボ・ラ・コルーニャですが、彼らとて優勝前の過去10シーズンで2位3回、3位2回と、非常にハイレベルな成績を挙げているクラブ史の全盛期であり、当時世界最強だったブラジル代表のマウロ・シルバとジャウミーニャ、後にバイエルンのエースとして活躍するオランダ代表ロイ・マカーイらを擁していて、やはり7年前は3部にいたレスターとは似た状況と言い難いチームです。

 プレミアリーグは今シーズンのレスター・シティを加えて、創立から24シーズンでの優勝クラブが「6」となりましたが、リーガは今シーズンも「2強」とアトレティコによる3クラブの優勝争いですので、その数が「5」から増えることはありません。

 そう。スペインでも四半世紀近く番狂わせは起こっていないわけです。

 

ドイツ、イタリアでも・・・

 

 それでは多くの日本人選手が活躍するドイツのブンデスリーガはどうでしょう。優勝クラブの内訳は、バイエルン・ミュンヘン(13回)、ボルシア・ドルトムント(5回)、ヴェルダー・ブレーメン(2回)、ヴォルフスブルク(1回)、シュツットガルト(1回)、1FCカイザースラウテルン(1回)の「6」クラブです。今季もバイエルンが優勝する見通しなので、24シーズンで14回の優勝を遂げることになります。こちらは限りなく「1強」に近い2強体制といったところでしょうか。

 この間優勝1回の4クラブについても、ブレーメンが4回目、シュツットガルトが5回目、1FCカイザースラウテルンが4回目と、それぞれ複数の優勝経験がある古豪です。2008-2009シーズンに長谷部誠を擁して初優勝したヴォルフスブルクが最も実績の無いクラブですが、1945年創立で、1997年の1部昇格以降は今季に至るまで降格なしという安定感。なによりチーム背景として、フォルクスワーゲンのお膝下でスポンサードを受けていることによる安定した資金力を持つ点が、路頭に迷ってタイ企業に拾われたレスターと比べると雲泥の差です。

 つまりドイツでも、レスターのような番狂わせは起こっていません。

 

 そしてイタリアのセリエA。こちらはユヴェントス(9回)、ACミラン(6回)、インテル(5回)、ローマ(1回)、ラツィオ(1回)となっています。(※八百長スキャンダルの制裁措置として、2004年のユヴェントスの優勝は無効)優勝チーム数は同じくスペインと同じく「5」。今シーズンもユヴェントスが優勝を決めており、長きにわたってユーヴェ優位の「3強」体制が続いています。ローマ、ラツィオにしても強豪の一角として優勝しており、ともに初優勝ではありません。

 そうです。セリエAでもジャイアントキリングは起こっていないのです。

 

現代サッカー史に風穴があいた

 

 こうして見てきたように、「一部の強豪による優勝持ち回りの合間で、ごく稀に古豪や中堅が勝てるかもしれない」という図式が、現代の欧州リーグの現状です。

 過去に強かった時代もなく、今持っているお金もない。そんなチームが優勝するというケースは消え去りました。

 言ってしまえば、「番狂わせが起こったことがない」のが、現代の欧州サッカーリーグなわけです。

 

 でも、今季レスターが勝っちゃった。

 

 こうして見ると、創設133年目に5000倍のオッズで優勝したことよりも、商業化が完成されて以降の「現代サッカーで史上初の番狂わせ」という意味合いが、より偉業として讃えられるべき部分だと思うのです。

 

 さて、今回はレスター優勝について「レア度」という側面からまとめてみました。レアどころか、歴史に風穴をあける事件だったと言えるでしょう。

 

 次回は優勝の内容と、それがもたらすものについて書いていきます。

 

【了】※敬称略